学力、お金、人間関係…「公立校と私立校」選択の差


学力、お金、人間関係…「公立校と私立校」選択の差


私立中高一貫校を中心に、私立校が人気だ。教育力が高そう、生徒一人ひとりを丁寧に見てくれる、生徒指導がしっかりとしている、裕福な家庭が多いのでイジメが少なそう…などさまざまな理由がありそうだが、公立校に比べて学費が高い私立校は本当に“おトク”なのだろうか。



 『公立VS私立』(橘木俊詔/ベストセラーズ)は、小学校、中学校、高校、大学に至るまで、「学力」「お金」「人間関係」の3要素で「公立VS私立」を比較している。公立と私立の選択で、どれくらいの差が表れるものなのだろうか。本書では、政府の統計、週刊誌のランキング、そして独自に行った公立中高・私立中高出身者へのアンケートなどを元に、徹底的に数値で比較しているのだが、データをすべて掲載するわけにはいかないので、かいつまんで紹介したい。(※本書は2014年2月に出版されており、データは最新ではない場合がある)



(1)学力…いい教育が受けられるのは?

・2013年度全国学力テスト
全国の小・中学生が対象。私立校のほうが正答率が高い。私立中学では学力試験を課し、学力が高い生徒を選別しているからと考えられる。また、入学後、塾や家庭教師といった学校外での学習が常態化していることも、大きな要因か。


・「いい大学」に行けるのは
「東大合格者ランキング」は私立中高一貫校からの合格者が圧倒。「京大合格者ラインキング」もトップ10のうち7校が私立。


・国際的な学力調査PISA(OECD加盟国の生徒に対する学習到達度調査/2009年度調査結果)
「読解力」の項目…国公立が上回る。私立高校は非常にさまざまなランクの学校があり、学校間格差が顕著であるからか。


 高偏差値の大学に行けるトップ層には私立高出身者が多いが、全般的なテストの平均値では、学校間格差が少ない公立校のほうが高い。


・「学問」の探求
日本人歴代ノーベル賞受賞者19人は、すべて国立大出身。国立大の研究補助金が潤沢だからか。また、私立と国公立大では、教員数と生徒数の割合で約2倍の開きがある。その分、国公立大のほうが濃く学ぶことができる。



(2)お金…「コスト」と「リターン」からみて経済的なのは?


・大学卒業までにかかる学費(典型的なケース)

オール公立…949万円(小中高大とも公立)

中学から私立…1642万円(公立小、私立中高、大学は私立理系)

オール私立…2344万円(私立小、私立中高、大学は私立理系)


 低成長時代の不況下で、会社員の給料は下がるが大学費用の割合は高まっており、世帯年収の4割が学費負担に。慶應義塾大ですら、自宅通学の学生が多く「関東圏の一ローカル大学化している」とも。


・中学受験の「リターン」
年収を比較すると、中高に限っては、私立中高出身者のほうが「金銭的にはかなり回収している」。


・生涯年収(「大学別生涯賃金期待値ランキング」週刊ダイヤモンド/2012.11.3号)
1位は、主要400企業への就職率が54.4%とダントツの一橋大学。2位に国際教養大。3位は慶應。


 基本はオール国公立コースが費用最少で高リターン。ただし、卒業後は私立のほうが人脈などの面で有利な場合もあるので、中学から私立に行くという選択もあってよさそう。国立大へ入学するために私立中高を選ぶ層は少なくない。



(3)人間関係…豊かな人間関係が築けるのは?

私立校=特定の階層が集まりやすい
 とくに別学の場合は深い絆を持った同性の友だちができやすい。男子校出身者の卒業後の“親友関係キープ率”は6割を超えるというデータも。中高一貫校では、3年間の学校に比べ、そのぶん友情を育みやすい。


公立校=社会の縮図
 いろいろな子どもがいる環境で育つことで、応用力がある、幅広い考え方を持つ大人になる可能性が高い。大人になってから気づいたのでは遅すぎる。


 公立校と私立校を同列に比較するのはお門違いという意見もある。私立校は独自の教育方針に基いて教育を行い、公立校は税金の投入により特殊な教育方針に縛られることなく、国民全員に対して平等に教育水準を上げることが目的だ。子どもには個性がある。学力、お金、人間関係についての比較だけで学校選びをするのではなく、公立・私立向き、教育方針、部活動、校風に合うかなどの相性も大切にしてもらいたい。


(2015.6.24  ダ・ヴィンチニュース から転載)