児童一人ひとりの個性を伸ばす私立小学校


児童数は増加傾向、教育費負担軽減が課題


平成元年から24年間で 私立小学校は51校増加 公立小は約3800校減少


 私立小学校は平成25年5月1日現在、全国で212校を数える。国公私立小学校総数では2万131校なので私立小学校は全体の1%と小さな存在だが、各学校が特色のある、魅力あふれる教育を展開している。私立小学校の教育は、各学校が創立者の建学の理念を支柱に、長年の実験的な試みや研究等を経て作り上げられた教育。子どもたちのさらなる成長に向けて今なお教育の創意工夫が続けられている。

 わが国の小学校児童数は平成元年に約960万人を数えたが、最新データである平成25年現在、約668万人で、平成元年と比べると小学校児童数は292万人減少した。ちなみに東京タワーが完成した昭和33年がピークで、平成25年の約2倍に当たる1350万人が小学校に在籍していた。

こうした約50年にもわたる減少傾向は、小学生児童数総数の98.2%を占める公立小学校に極めて顕著な形で表れており、平成元年に2万4608校あった公立小学校は25年には2万836校にまで減少。約25年の間に3772校が消滅した計算となる。
 
この間、私立小学校はどうだったかというと、平成元年に170校だった学校数は25年には221校に拡大、児童数はこの間に1万5626人、率にして約25%も増えている。
 
こうした私立小学校入学者の増加は、社会の私立小学校教育に対する期待の高まりと言える。それは私立小学校が長年続けてきている、心豊かな人格を育てる教育、児童1人ひとりの個性を尊重し輝かせる教育、奉仕の心を育てる教育、国際的感覚を育てる教育、目の行き届いた少人数教育、また施設面では充実した教育環境、同一法人の上級学校との連携、小・中あるいは小・中・高校といった一貫教育などが社会の支持を集めているからだろう。

 また私立学校の場合、基本的に教員は公立学校のように転勤はなく、同じ学校で勤務することになる。こうしたことは教員が転勤を繰り返す公立学校と私立学校の決定的な違いの1つで私立学校では教員の自校の教育への強い愛情を生む要因となっている。

私立小学校が新たな教育を開発

 児童増加傾向にある私立小学校だが、その教育に障害がないわけではない。それは保護者に大きな教育費負担がかかることだ。私立小学校は義務教育段階の学校。公立小学校には憲法で保障された義務教育は無償の原則が適用されるが、私学にその原則は適用されず、保護者に大きな教育費負担がかかる状況だ。

私立小学校に対しては私立学校振興助成法や地方交付税による財源措置に基づく経常費助成が各都道府県から出されているが、その額は児童一人当たり平均して年額28万円程度。公立小学校には児童一人当たり年間100万円近い公費が使われていることを考えるとあまりにも格差は大きい。
その公費支出格差が是正されて公私立小学校が競争条件の近い中で切磋琢磨してこそ、わが国の教育のさらなる発展につながるといえる。
また私立小学校がさまざまな先進的な取り組みや研究を行うことで新たな教育が誕生していくことになる。公立小学校で行われている教育には私立小学校で実践されてきたものがあり、外国語教育も私立小学校では長年の研究蓄積がある。ほかにも帰国児童の受け入れなど、私立学校が開発した教育実践は数多い。



◆国公私立小学校の児童の推移(文部科学省:学校基本調査より)
昭和33年 13,492,087人
平成元年  9,606,627人
平成23年  6,887,292人
平成24年  6,764,619人
平成25年  6,676,920人



◆私立小学校の児童数の推移(文部科学省:学校基本調査より)
平成元年  62,674人
平成22年  79,042人
平成23年  78,999人
平成24年  78,641人
平成25年  78,300人



☆私立小学校の推移
平成元年  170校
平成22年  213校
平成23年  216校
平成24年  220校
平成25年  221校




★小学校の学校数、児童数、本務教員数 (注 昭和47年以前については沖縄は含まない

       国立学校数  私立学校数  国立児童数   私立児童数   国立本務教員数   私立本務教員数
平成元年  73校    170校    47,400人   62,674人   1,782人     2,891人
平成5年   73校    171校    47,226人   66,975人   1,782人     3,063人
平成10年  73校    171校    47,334人   68,036人   1,769人     3,221人
平成15年  73校    179校    47,152人   68,063人   1,771人     3,364人
平成20年  73校    206校    45,871人   76,904人   1,855人     4,174人
平成23年  74校    216校    44,580人   78,999人   1,859人     4,584人
平成24年  74校    220校    43,257人   78,641人   1,848人     4,705人
平成25年  74校    221校    42,093人   78,300人   1,843人     4,782人


(2014.5.1 全私学新聞から転載)